本研究は、地域の自立を促進し持続可能な地域形成するため、中山間地域を対象として地域通貨を導入し、「地域内コミュニティの活性化」「都市・外部との交流」「地域内の人材活用」等中山間地域全体の課題解決の手法としての評価をおこない、今後の地域の持続的発展に寄与しようとするものである。

平成21年度研究成果

1. 目的

本研究では、高齢化・過疎化がすすむ中山間地域の活性化ツールとして「地域通貨」のもつムラのひとびと、ムラとまちをつなぐ可能性に着目し、北陸地域への導入を検討するものである。

2. 地域通貨の可能性

(1) 地域通貨の特徴と目的

地域通貨とは、特定の地域、コミュニティに限定して流通する通貨のことであり、地域の経済活性化やコミュニティの活性化を目的に各地で導入されている。

地域通貨の国家通貨とは異なる特徴として、特定の理念や社会的関係性なしには機能しない通貨だということがある。これは貨幣として欠点と見ることもできるが、社会的関係性の(再)構築という特有の効能を持つコミュニケーション・メディアとして優れた特徴を持っているとも言える。

表1 地域通貨の特性

特性 国家通貨 地域通貨
価値尺度 一元的な尺度 多様な尺度
購買手段 広い範囲で通用 限られた範囲
交換手段 広く交換可能 限定的
決済手段 法的強制力 コミュニティの信頼
価値保蔵 プラスの利子 負または0の利子

表2 地域通貨導入の目的と効果

経済の活性化 自発的な参加者による互酬的交換促進
自律的な地域経済の成長を促進
取引手段としての貨幣機能を活性化
コミュニティの活性化 福祉・介護など個人が請け負う非市場的サービスを活性化
様々な分野のNGOやNPOの活動を結びつける理念・枠組みを構築
協同・信頼関係構築。コミュニケーションの多様・豊穣化

(2) 中山間地域での地域通貨の事例

写真 間伐・排出の様子

中山間地域型の地域通貨として、高知県にて森林保全活動を行っているNPO法人土佐の森・救援隊の「モリ券」の事例を調査した。

土佐の森・救援隊の活動理念は、「自分の山は自分で管理する、自分ひとりで出来なければ、協働・地域コミュニティ力で助け合う」、の復活であり、間伐・林道整備といった森林保全活動とシンポジウムや研修会など新たな人を招く活動をしている。地域通貨「モリ券」は、間伐作業や木材の搬出作業を手伝うことで配布され、地域内の商店で地場産品との交換が可能である。その効果は表3のとおりである。さらに、これらの活動および地域通貨の仕組みがバイオマスエネルギー事業と連携することで、行政・民間企業でも全国的に成立困難な木質バイオマス資源の活用に経営的な目処がたち、そして小規模林業が地域の新たな産業・住民の副業として確立させている。

①森林保全の多様な担い手 森林組合等プロに任せきりの森林整備保全に、人々の関心を向けさせ、小規模専業〜副業〜ボランティアなど多様な参加形態を提供。人々をつなぐ役割
②地域の商店等へ効果波及 活動の参加者と地元の商店や地場産品を結びつける。域内と域外から地域経済を活性化させる効果
③理念に賛同する企業・行政の参加 森林保全活動の直接的参加者と、救援隊の活動意義を認める個人・企業などの間接的な参加者を結びつける

3. 北陸地域の中山間地域への導入可能性と今後の予定

上記の事例でみるように、中山間地域における地域通貨は導入そのものを目的とせず、あくまで課題解決の補助的な役割、多様なつながりのツールとしてとらえる必要がある。

北陸地域は、中山間地を多くかかえ豪雪や地震などの自然災害のリスクにさらされている。新潟県中越地震は、集落の過疎・高齢化のスピードに拍車をかけたが、一方で地域を見つめ将来にむけて活動を起こすきっかけにもなっており、これは中越沖地震や能登地震でも同様である。

来年度は、北陸地域内で取り組まれている中山間地での地域づくりの実践から、地域通貨の導入の可能性を探りアクションリサーチを実施する予定である。

プロジェクトⅤ 中山間地の活性化策を用いた 課題解決手法の調査研究 報告書